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総長メッセージ

湘南工科大学総長 糸山英太郎からのメッセージです。
月1回所信を表明しています。


2月総長所信 貿易赤字を理系学生が救う

財務省が発表した2011年日本の貿易収支は2兆4927億円の赤字となりました。
輸出と輸入が逆転し、貿易収支が赤字となるのは実に31年ぶりのことです。輸出立国として成長を続けてきた我が日本が今、危機的状況にあることを認識せねばなりません。
輸出入逆転の原因として東日本大震災による輸出の落ち込み、原発停止による火力発電用液化天然ガスの輸入増加が貿易赤字の主たる要因であり、一時的なものであるとの話もありますが、やはり日本の製造業が海外へ流出している事実を正視するべきだと私は考えています。

貿易収支に日本企業が外国で得た収益などを加えた経常収支では、まだ日本は黒字を確保しているわけですが、今後この黒字を世界各国が国益として奪い合うことになることは間違いありません。
欧州の債務危機でも真っ先に経常赤字国の国債利回りが上昇し、世界からの信認を失ったことは記憶に新しいところです。
別格の経常赤字国である米国のオバマ大統領でさえ、海外に流出した製造業の国内回帰を優遇税制で後押しすると明言しました。
経常黒字の源泉は国内製造業の成長にほかならないと世界中が意識しているのです。
理系学生諸君が一生懸命勉強し、日本の誇る様々な技術を継承・発展させることによって日本の製造業は復活するはずです。
理系学生には今までにない大きな期待がかかっていることを忘れないでください。

日本が誇るソニー、パナソニック、トヨタ、新日鉄は韓国のサムスン、LG、現代自動車、ポスコに本当に追い付かれたのでしょうか。
私はまだ勝負はこれからだと思っています。幕末に記された『ペリー提督日本遠征日記』に「機構製品および一般実用製品において、日本人はたいした手技を示す。彼らが粗末な道具しか使ってなく、機械を使うことに疎いことを考慮すると、彼らの手作業の技能の熟達度は驚くほどである。日本人の手職人は世界のどの国の手職人に劣らず熟達しており、国民の発明力が自由に発揮されるようになったら、最も進んだ工業国に日本が追いつく日はそう遠くないだろう」とあります。
当時ペリーを唸らせた日本人のポテンシャルはいまなお健在なはずです。

長い間、理系学生が優秀な技術者となり輸出立国日本を支えてきました。
これからも日本の進む道は変わりません。国土が狭く、資源がなく人口が多い日本は高度な技術を磨くことで生きていくのです。
国を支える喜びに多くの若者が目覚め、再び日本のものづくりを世界に知らしめる日が来ることを私は確信しています。
湘南工科大学は50年間日本の製造業を支える優秀な技術者を輩出してきました。未来に向けてその志が変わることはありません。
私は学生諸君のさらなる奮起を期待しています。

湘南工科大学総長
糸山英太郎

1月総長所信 2012年日本人が進む道

謹賀新年 2012年を迎えました。

年を越しても東日本大震災で負った傷は癒えず、長い避難生活に耐えながら復興を目指している人が大勢います。
マスコミは災害の記憶を風化させてはならないとあらゆる切り口で報道を続け、東北における避難生活、放射能汚染、経済的困窮などを伝えています。
しかしそれは東北以外に在住する人に「食べ物が不安、子育てが不安、家を建てるのが不安」などという心理傾向をつくってしまったのではないかと思っています。
ビジネス面でも災害復興に直接関係するものはよく取り上げられますが、それ以外の派手なビジネスの話は憚られるとの空気が支配的です。
国民がライフサイクルに疑問を持ち、企業家がモチベーションを削がれたことは否定できません。
被災者の方々のご苦労と災害関係報道の必要性は十分承知していますが、それも過ぎれば景気回復の妨げになるのではないかと危惧しているのです。

地震、津波、原発のどれをとっても対応策を整える必要があることは言うまでもありません。それでも同時に日本は前に進まなくてはならないのです。
人間は夢がなければ前に進むことができません。美味しいものを食べてみたい、子供を育てて家族をつくりたい、家族が暮らせる家が欲しい、人々のささやかな夢が日本経済を牽引してきたことを思い出してみてください。
国民の誠実な夢は国力そのものであると信じています。今年は日本人として夢を持って積極果敢な行動をとるべきです。
日本全体の活性化が、結果として被災地の復興に一番の好循環をもたらすでしょう。

私は本学の総長として学生諸君に、夢を持って進みなさいと言ってきました。
学生諸君は決して10年後、20年後の日本と自分を悲観してはなりません。
好況時に不況を想像できなかったように、不況時に好況を想像することは難しいことですが、我々の先人は多くの荒波を逞しく乗り越えてきたのです。
第二次世界大戦直後の焼け野原では製造、流通、金融などあらゆるシステムが破壊されましたが日本社会は見事に立ち直りました。
学生諸君は日本の未来を信じて、自分を見失わない心を持ってください。
大王製紙前会長の井川意高氏は東大法学部卒の秀才でしたが、完全に自分を見失い家族や会社そして日本を裏切ってしまいました。
私は秀才ではありませんでしたが、一日一日を大切に、真面目に勉強を続け、仕事に没頭してきました。
今年で70歳になりますが日本を裏切ったことはありません。
私同様、一生懸命勉強している学生諸君の未来が暗いはずがないではありませんか。

2012年が皆さんにとって、積極果敢に攻める年となることを強く期待しています。頑張ってください。

湘南工科大学総長
糸山英太郎

12月総長所信 政治家と有権者が責任を持つ

 大阪府知事・大阪市長のダブル選挙は、大阪都構想を掲げた橋下徹氏の圧勝となりました。
私自身若くして政治家となったので若い人が出てくることには大賛成ですし、橋下氏や松井一郎氏が大阪で頑張っていることはよく聞いていましたので、周囲の人間には応援を指示しておりました。まずは当選のお祝いを申し上げたいと思います。
 しかし、今回の大阪有権者の投票行動には一抹の不安を感じております。
面白そうだから新しいからという軽いノリで積み上がった票は興味を失うのも早く、アッという間にその形を変えてしまうものです。
 政治とは元来複雑なものであるにもかかわらず選挙では争点を単純化しています。そうしなければ大衆に伝えることが難しくなることは承知しているのですが、最近はそれが過ぎているようです。
私は大阪で本当に必要な政治的解決が後回しにされるという悲劇を危惧しています。橋下氏には私の辛口エールに是非応えてほしいと思っています。

 国政に於いても重要案件は山積みとなっています。
消費税・TPP・武器輸出・原発・沖縄基地移転等、これらは反対意見や慎重意見が出やすいものであることは言うまでもありません。
しかし、日本の国益を真剣に考えるならば正面から取り組んでいく必要のあるものばかりです。
この様な問題の是非について答えるとき政治家は様々な態度をとることになりますが、大衆受けする単純な反対意見を唱える人間が当選し、国を憂えて賛成意見を表わした人間が落選するという愚かな結果ばかりが目につきます。
政治家は責任を持って政策を遂行する必要があります。たとえそれが大衆に受けない政策であってもやりきることが政治の神髄なのだと思います。
そして国民はそんな政治家を選ぶ力を備える必要があるのです。

 景気対策については誰も反対しないにもかかわらず、政治家は景気浮揚政策を遂行できずにいます。
これは認識不足ということでしょう。実業に関わったことがない政治家はこの惨憺たる日本経済の状況を正確に把握していません。
誰一人としてデフレ脱却、インフレ誘導を言わないことがその証明です。
10兆円の消費税を議論している間に日経平均株価が1,000円下落し、時価総額が30兆円吹き飛んでいるのです。いま政治が一番責任を持たなければならないのは日本の景気だということを有権者も強く認識して投票行動をとるべきだと考えます。

 国の有様について政治家と有権者が責任を持つという極めて当たり前のことを私は申し上げたいのです。


湘南工科大学総長
糸山英太郎

11月総長所信 白熱 総長特別講義

 10月19日に湘南工科大学において、「総長特別講義」を開講しました。
あらゆる講演依頼を断り続けてきた私ですが、本学の学生に直接思いを伝えるこの総長特別講義だけは全く別のものであることは言うまでもありません。
実に3年ぶりの開講となったわけですが、以前と変わらぬ白熱講義となったことを大変嬉しく感じております。

 今回は就職活動をスタートさせた3年生、見事内定を獲得した4年生の中から300名の学生が聴講しました。
私は冒頭で「就職活動を始めた3年生、来春社会人となる4年生に世界経済の未来について良いデータを示したかったが見つけることができなかった。しからば学生諸君はなんとするべきか。自分自身で選んだ仕事に就いて3年辛抱してほしい。その時必ず彼方に見えるものがある」とはっきり言いました。
私が政治家を志した18歳頃の話を披露しながら諦めない心を繰り返し説いたのです。
大きくうなずきながら聞く学生諸君を見てその心が届いたと確信しております。

 学生諸君はご両親の君らへの思いに気付くべきだ、と叱咤しました。
「どんな思いで君たちを大学に進ませてくれたのかと考えを巡らせることは、学業を進める上で君らの大きな力となるはずだ。親は子のためならどんな苦難も引き受けて子の幸せを願っている。そろそろそんな思いを煙たがったり照れたりすることなく受けとめることのできる大人になってほしい」。
昨今希薄になりがちな親子関係を変えていくことこそ、厳しい時代を生き抜く学生諸君の基本姿勢であると諭したかったのです。

 講義後半の質疑応答は多くの学生から質問があり、さらに白熱したものとなりました。
 バングラデシュの留学生からは「日本の大学で学んだからには日本で働きたいという強い思いで就職の内定を獲得しました。でも総長のお話では祖国への貢献も大事であるとありました。私は如何なる道を選ぶべきでしょうか」という質問がありました。
一生懸命に日本語を習得し、機械システム工学を学んだ彼の真摯な姿に私は感無量でした。本学でこのような立派な留学生が育ってくれていたのです。
「そのような思いを抱いているならば私が言うことは何もない。日本で働こうが祖国で働こうがその思いさえあれば祖国への貢献は既に始まっている。これまでよく頑張ってきたな」。彼と交わした握手にバングラデシュの力強い未来を感じました。

 東日本大震災で被災した女子学生からは「震災によって家族が甚大な被害を受け、私だけ学業を継続して良いのか大変悩みました。でも総長設立の財団から奨学支援をいただき勉強を続ける決心をしました。大学を卒業したら地元に就職し、復興に力を尽くしたいと思っています。本当にありがとうございました」と力強い言葉をもらいました。
不覚にも私は涙を流してしまいました。
天を恨みたくなる程の被害を受けたにも関わらず、卒業後は地元への貢献を心に決めている彼女はなんと逞しいのでしょうか。
「何も心配せず勉強に励んでほしい。あなたの決意を私は誇りに思っている」。
彼女と交わした握手には格別の思いを込めたつもりです。

 ほかにも「人生の目標とは」「自分に自信が持てない」「TPPの是非は」などさまざまな質問や意見を学生が自分の言葉で語ってくれ、当然私も自分の言葉で真剣に答えました。
学生諸君は私の子供同然です。故に本当の親子が如く真摯に向き合うことは必定です。
湘南工科大学には私以外にも白熱講義の教授陣が揃っています。学生諸君には臆することなく学びへ挑んでほしいと思っています。
そして、学生諸君が望むなら私も再び登壇するつもりです。


湘南工科大学総長
糸山英太郎

10月総長所信 ネットワーク上の言論(2011年9月30日)

 チュニジア、エジプト、そしてリビアといったアラブ・イスラム圏の民主化が進んでいます。
1980年代、私は外務委員長としてアラブ諸国を歴訪していましたが、当時アラブ諸国の指導者たちは一様に自国の経済成長を望んでいました。
特にエジプトのムバラク大統領との会談では経済成長によって国民の生活を豊かにし、子供たちへ教育の機会を与え、全国的な識字率を上昇させたいと熱く語っていました。
私はアラブ諸国の未来に可能性を感じ、そして密かに将来の民主化運動についても予見していたことを思い出します。
 あれから30年の月日がたち経済成長は一定の成果を得て、各国の識字率は大きく上昇しました。指導者たちの思い描いたかたちであるかどうかは別にして、民主化運動へと進む環境は整っていったのです。
外交的に様々な干渉を受けながら自国を牽引してきたアラブ諸国指導者たちの役割が終わったのでしょう。これも歴史の必然であると思っています。

 そのような中、私は一連の民主化運動にフェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やツイッターが関わっていることに違和感を持っています。
民主化運動のための情報共有と言えば聞こえは良いのですが、実際は暴動の扇動に他なりません。
チュニジアのジャスミン革命では、フェイスブックを介して独裁政権打倒を呼びかけたにも係わらず、今度は暫定政権をフェイスブックで罵り倒すという大混乱を演じているのです。
ネットに無責任な意見をばら撒く輩は安定ではなく混乱が続くことを望んでいるとしか考えられません。
 アジアでも韓国・北朝鮮との関係についてSNS上で極端な肯定と否定が跋扈(ばっこ)し韓国警察当局は神経質になっていますし、毎度過激に反応する中国はSNSへの接続制限というような強権を発動する始末です。

 最近は著名人の講演も、すぐに何を喋ったとSNSで瞬く間に外部へ情報が伝播されてしまいます。
講演の一部分を切り取って歪曲し中傷を加えたものが速報として出回り、後は一切の反論を許さない、多勢に無勢という状況に陥ってしまうのです。
米国オバマ大統領はツイッターで選挙戦を制したと言われておりますが、今は逆にツイッターによって追い詰められているという状況です。
私が講演を引き受けない理由の一つに、このSNS問題があるのです。

 湘南工科大学にもネットを駆使した技術を学ぶ学生がたくさんおりますので、ネットそのものの隆盛を否定しているわけではありません。
高度な情報ツールには高いモラルが必要であると警鐘を鳴らしたいのです。SNSを高度に使いこなす勉強を学生諸君には期待しています。

湘南工科大学総長
糸山英太郎

9月総長所信 いつまで続くドジョウ内閣(2011年9月1日)

 歴史的な政権交代から2年が経過しましたが、これまで民主党政権は国民の期待を裏切り続けてきました。
民主党政権3人目の首相に野田佳彦氏が指名され、党幹事長に輿石東氏を起用する他ないところに民主党の限界というものが現れていると私は思っています。党内融和と言っていますがそれは何もできなくなるということに他ならず、その上選挙回避を担保してくれる布陣であることが丸見えです。
バラまきマニフェストの見直し、震災復興財源確保の増税、TPP参加問題など主な課題だけでもその糸口すら見えません。根本的に主義主張の違う者同士が大事を成すことは極めて難しいことを政治家も国民も知るべきなのです。

 一定の期間、野田新首相で政治を行うならばこれ以上国益を損なう行動は止めてほしいと注文したいと思っています。
それは外交政策・財政政策・エネルギー政策において菅直人首相とは真逆の行動を採れということです。
菅首相の尖閣諸島問題での迷走と北方領土問題での弱腰は国を守るという外交の基本すら知らなかったことを示しました。
また、日本の長期国債格下げのときには「そういうことには疎い」と言い切り世界から失笑されました。
極めつけは唐突に発言した「脱原発」です。国家の根幹をなすエネルギー政策を何のすり合わせもなく突然方向転換したのです。
 思い返せば、昨年の6月8日菅首相は就任会見で「奇兵隊内閣と名付けたい」と自身を幕末の志士 高杉晋作になぞらえましたが、なんとおこがましいことであったかと言わざるを得ません。
是非、野田新首相にはこんな不遜な発言も慎んでいただきたいものです。

 私の望みは、一日も早く解散総選挙によって政権担当能力をもつ政治家が選び出され、大きく損なわれた日本の国益を取り戻してくれることです。大いに時間がかかるところに私は期待をしているのです。
 年々政治家のレベルが下がっているとの誹りを耳にしますが、その政治家を選び出す有権者のレベルも如何なものかと思います。
派手な金魚に熱狂することもドジョウに過剰な期待を持つことも愚かなことであると自覚したいものです。

 松下政経塾出身者が首相となり満足な仕事ができなかったなら、松下幸之助翁の悲しみはこの上ないものとなりましょう。
日本が背負った1,000兆円の借金を経営の神様は嘆いているはずです。
若き日、松下幸之助翁から実際に薫陶を受けた者の一人であるだけに、私はここに複雑な思いを抱いているのです。



湘南工科大学総長
糸山英太郎

8月総長所信 増税は子供たちのあらゆる意欲を失わせる(2011年7月29日)

 円高が急速に進んでいます。米国の債務問題が背景にあることは承知していますが、ドル売り円買いの根拠はいつも曖昧です。
そもそも通貨の価値は国力そのものであるはずです。
震災によって経済停滞、財政悪化が必定である日本が、現実にデフォルトに陥ることなどない米国より強いとは到底思えません。経済に疎い現政権が為替投機筋に翻弄されているというところが実情でしょう。
 極端な円高は輸出企業に大打撃を与え、極端な円安も食品やガソリン価格の上昇から国内経済に大打撃を与えます。
国力時勢に見合った適正な為替水準というものが、震災復興が責務である日本にとって国益であると思っています。日銀は各国中央銀行と協調すべきなのです。

 財政問題について言えば日本も米国もなぜ財政が悪化しているのか、という根源的な問いに誰も答えていないまま増税の話が議論されています。
シンプルに言ってしまえば日米ともに贅沢な生活を満喫してきたからにほかならないのです。その支出を上回る税収がなければ借金が増えるのは当たり前ではないでしょうか。
 日本は復興事業の財源確保のために10兆円の臨時増税で賄うと言っていますが、これまで経済を活性化させて税収を増やす努力を全くしてこなかった政府が言える話ではありません。
単純に前の世代が後の世代に借金を付け回しているというだけなのです。
聡明な子供たちは不誠実な世代の犠牲になることを感じ取り、不安な気持ちや諦めそうになる自分の心と闘っているのです。

 そんな状態であるにもかかわらず、菅直人首相の思いつきによる「脱原発宣言」はさらに財政を悪化させかねない深刻な問題になっています。
原子力発電所は日本が誇る高額輸出商品です。その技術開発をリードしてきた日本はその安全性の向上に取り組むことにも責任があるはずです。
日本は菅首相の軽率な発言で、原発輸出を断念するのではとの観測を各国にもたれてしまいました。
苦労して基本合意にまでこぎ着けたベトナムの原発2基の受注を韓国に奪われようとしているのですから尋常ではありません。
原発2基の建設費は1兆円に迫るものです。そのビジネスをいとも簡単に捨てて、お金がないから増税とは国民を馬鹿にしすぎでしょう。

 電力需給ひっ迫から節電が必要な措置であることは承知していますが、節約は美徳とばかりに何でも着ない、食べない、買わないでは日本経済が破壊されてしまいます。
「がんばろう日本」「絆(きずな)」という抽象的な掛け声だけで東北の被災者を救うことはできませんし、被災者もそんなことは望んでいないはずです。
経済そのものを立て直すことでのみ、震災復興も財政再建も叶うことなのです。
ごまかしてはいけません。税収が増える本物の経済成長こそが子供たちの将来に借金を残さない唯一の方法であることを政治は知るべきです。
子供たちの将来に希望を与える政策を強く望んでいます。


湘南工科大学総長
糸山英太郎

7月総長所信 日本国民が選ぶエネルギー政策(2011年7月1日)

 アメリカ、フランス、イギリス、中国、インドなど多くの国は自国のエネルギー政策に原子力を大きく掲げています。
一方でドイツ、イタリア、スウェーデン、ベルギーなどは原子力撤廃を政策化した時期があります。
未だ日本は今回の震災から原子力エネルギーにおいて、いかなる道を選択すべきなのか、明快な答えを出せないでいます。

 そんな中、私は原子力発電の是非についての議論が冷静さを欠いたまま進んでいることに大きな懸念を持っています。
原子力発電所などこの世から消してしまえというヒステリックな声に論理性は見られません。
特に経済的な観念を考慮しない感情的な意見は、国家財政というものを全く理解していないとしか言いようがないのです。

 確かに今回の原発事故は取り返しのつかない惨事となりましたが、原子力発電所が日本には必要であるから作ってきたことを忘れているのではないでしょうか。
これまで高水準の電力安定供給にどれだけの英知が投入されてきたか、私はつぶさに見てきた者の一人です。
原子力発電所を撤廃すれば電気代は倍増し、CO2排出量が激増することは間違いありません。
その上、国が高額で電力を買い取る再生可能エネルギー促進法など、正気の沙汰ではありません。
感情的な反原発政策を進めればお金がいくらあっても足りません。消費税率を10%に引き上げても足りなくなることは必定です。
このことを誰も言わないことが不思議でならないのです。いずれ国家財政がひっ迫し、日本は先進国では無くなり途上国となるでしょう。
政治家が選挙のためだけに原子力反対とのたまう姿は見るに堪えません。我々の世代が湯水のようにお金を使えば、子や孫がその膨大な借金を背負うことになり、それこそ取り返しのつかない事態となるのです。

 また、エネルギー政策は各国の安全保障に直結しています。
これまでの戦争は、エネルギーの争奪戦そのものであったということは言うまでもありません。その国のエネルギー源が多様であることはその国の安全保障上、重要なことなのです。
特に日本は原油の99%を輸入に頼っており、エネルギー安全保障という観点から極めて難しい外交をこれまで行ってきました。
私自身、衆院外務委員長時代に一番苦労し、心血を注いだのがエネルギー供給国との良好な関係構築でした。
全く原子力発電に頼らない世界に戻ってしまうと、原油価格の高騰がそのまま日本経済に大打撃を与えます。
たとえ津波が来なくとも、日本経済が壊滅的な被害を受ければ、日本国民の生活が破壊されることに何ら変わりはないのです。
そもそも電気という重要なインフラは、その発電源を原子力・火力・水力などに分散してリスクヘッジしなければならないものなのです。
さらに日本は、太陽光・太陽熱・風力・バイオマス・海水温度差・水素エネルギーなど次世代のあらゆるエネルギー研究にも力を注いでいます。さらなるエネルギーの多様化が、そのまま日本の国益につながるのです。

 東京電力株主総会も民主党両院議員総会も大荒れでしたが、その両方でトップの哀れな姿を見ることになってしまいました。東京電力にも民主党にも国難に立ち向かうリーダーはいませんでした。
しかし国民の側も東京電力に何兆円もの賠償を課して、安直な反原発を唱えるいいかげんな議員に疑問を持たないでいれば、同類の誹りを受けることになるでしょう。

 インドネシア政府は経済発展のために同国初の原発をつくります。
日本の原子力安全基盤機構から原発事故の詳細な情報を得て、十分な対策をとる準備を始めています。インドネシアは科学技術と冷静に向き合い、正しい折り合いをつけることを決めたのです
 今年の夏は、日本のエネルギー政策について議論する良い機会です。
暑い中、努めて冷静に我々と我々の子孫のために正しい意見を表明することが、真の復興を目指す日本人の矜持だと思っています。



湘南工科大学総長
糸山英太郎

6月総長所信 若者の命は国の宝だ(2011年5月25日)

前回掲載した総長の所信2に寄せられた反響に驚いています。
学校関係者だけでなく政界、経済界諸氏からいただいたメールには日本のエネルギー政策に対する熱い思いが溢れていました。自らの所信を表明することに何ら躊躇はございませんが、さらに身を引き締めてまいりたいと思っております。

東日本大震災によって死亡あるいは行方不明となった方々は28,000人を超えてしまいました。多くの人々の命が一瞬にして奪われた事実にただ驚愕するばかりです。
一方で我国の昨年の自殺者は31,690人でした。特に報道されることもなく大震災による死亡・行方不明者を大きく上回る人が命を落としているのです。しかも自殺者3万人超は13年連続という不名誉な記録となっています。

自らの意思の有無という点で自然災害と自殺は異なるものですが、一見平穏に見えるこの日本で、おびただしい数の人々が命を落としている事実に私は無関心ではいられません。
それは万が一にでも本学学生が命を失うことなどあってはならないからです。親は子が将来のための勉強をしていることに誇りを持ち、その支えに力を惜しみません。それゆえ、親が子を亡くした時の慟哭は想像を絶するものです。これほどの親不孝はないでしょう。自然災害・自殺などいかなるものであっても、我々はそれらから学生を守らなければならないのです。

災害に対する備えとして先日、本学は避難訓練を行いました。
対象は新入生全員です。全員を大講義室に集め災害から命を守るとはどういうことかという座学から始め、一時避難姿勢、災害状況の確認、避難および避難誘導を実行してみました。
およそ5分間で全員が退出し、避難の完了を確認することができました。その避難状況を複数のビデオカメラで撮影し、整然と進んだ経路や滞った経路を抽出することで、さらに効率的な避難誘導を目指しています。
また実際に、多人数が一斉に移動するということを学生も教職員も体感できた大変よい機会であったはずです。
今後も様々な災害想定による避難訓練を続けることで本学の災害対応能力を高めたいと考えております。

自殺の理由として経済状況の悪化が急増していますが、これは現政権の経済政策失敗によるものと断言できるでしょう。国民の生命と財産を守ることこそ政府の仕事であるにも関わらず、逆に財産を毀損させ生命を奪うことに加担しているのです。
しかし今、学生の命を守らねばならない我々が政権批判をしても詮無いことです。
そこで本学では、学生が一人で悩みを抱え込んだりしないように、大学生活のあらゆる悩み(成績・進級・就職・人間関係など)について対応できるようCC制度(コミュニケーションサークル制度)を設けています。
CC制度とは、1名の指導教員の下におよそ10名の学生が定期的に集まり気楽な交流の場としてもらうものです。
このような一人ひとりを見守るアットホーム教育は、学生の不安や戸惑いを取り除くことに成功しています。
また学生相談室では、臨床心理士が専門的なカウンセリングも行っています。些細なことでも気軽に利用してほしいと思っています。

平穏なようでいて多くの危険が潜む日常の中で、お預かりした学生の大切な命を守ることに我々は全力を注いでいきたいと思っています。

保守を堅持する私(68)と菅直人首相(64)は原子力エネルギー利用だけでなく根本的な考え方が違うことは言うまでもありません。
菅首相は我欲が強すぎて、あらゆる政策において若者の命を大切に扱っているとは言い難い状態です。
我々の世代は我欲を捨て、日本の復興に力を発揮する若者を育てることに専念すべきなのです。
私は若者の命を大切にし、逞しく聡明な人間に育てることこそ日本の国益に資するものであると強く信じています。
日本の若者の将来に思いを馳せると私の中に大きな力がみなぎってきます。私はまだまだ死ぬわけにはいきません。
日本の若者が見事、日本復興を果たすその日を見届けるまで力を惜しまないつもりです。


湘南工科大学総長
糸山英太郎

5月総長所信 科学技術と共に生きる(2011年4月27日)

2009年の自民党下野以来、私は講演や執筆で自らの考えを表わすことを控えてきました。
これは保守政治を守ることを本懐としてきた自分を顧みる時間であったのですが昨今の状況に黙していることは難しくなってまいりました。
湘南工科大学総長としてだけでなく糸山英太郎の私見も交え学生諸君・ご父兄の皆様・大学教職員などすべての学校関係者へ私の思いを伝えたいと考えました。月に一度のメッセージをご覧いただき私の所信をご理解いただければ幸いです。

まずは災害によって根底から揺らいでしまった原子力発電所の安全性について日本はいかに処すべきか私の思うところを伝えます。

そもそも私が政治に興味を持ったのは18歳、日本は六〇年安保真っ盛りでした。
当時、日本の安全保障について真剣に考えていた私は軍事的安全保障だけでなく資源エネルギーの安全保障にまで思いが及んでいました。
その時、日本の国策として避けて通れない最先端エネルギーに原子力があったことは言うまでもありません。
日本初の原子力発電は1963年、茨城県東海村に建設された東海発電所であり、時の科学技術庁長官・原子力委員会委員長は中曽根康弘氏でした。
中曽根氏と伯父笹川良一、義父笹川了平は大変親しく、日本の原子力政策について私は多くの話を聞かされました。
その後、国会議員となった私は一貫して日本のエネルギー政策の一つに原子力は必要であるとの立場をとってきました。
科学技術の進歩が日本国民の生活を豊かにしていく、さらに湘南工科大学を統べる立場になってからはそれに携わる技術者を育てることが社会貢献であると信じてきたのです。

科学技術を突き詰めていくと人類が手にする利益と不利益のバランスに悩まされますが、極限までその技術の信頼性を高めて折り合いをつけることが技術の実用化です。
しかし、今回ばかりは原子力発電という高度な技術に対する地震大国日本の折り合いのつけ方に間違いがあったと認めなければならないでしょう。
当然、原子力というものに長年縁を持ってきた私は今深い思索を強いられています。
原発反対の市川房江女史に仕えた菅直人首相が原発事故に翻弄されていますが、これは全く皮肉な話としか言いようがありません。

日本人は原子力発電という極めて高度な科学技術と如何に共生すべきなのでしょうか。
完璧な科学技術というものが存在しないことを前提にすれば、不測の事態に対する準備つまり安全を確保する技術を高めるほかありません。
自然災害、装置の不具合、人間のミス、外的攻撃などへの安全マージンを、お金と手間をかけて大きくするのです。
つまり合理性のある発電コストはこれまでよりも高いものになるでしょう。高価な電力を愛しみながら利用することに理解を持つ必要があるのです。

さらに今回の災害による原子力発電所事故が私たち日本人に与えた教訓はあまりにも多く、深いものばかりです。
ほんの40年前の日本は扇風機だけの電車に汗をかいて乗っていたし、大量の自動販売機も携帯電話もありませんでした。
日本人として際限なく快適性を追求することに疑問を持たねばならないときに来ているのではないでしょうか。
人類の歩みというものは立ち止まることが許されませんが、我々日本人にとって今はゆっくり彼方を眺める時間なのかもしれません。
50基以上の原子力発電所が日本の電力の30%を担っていることの是非を考え、あらゆる科学技術に過剰な依存をしないという覚悟を日本人が持った時に、新しい日本が動き出すと考えています。


2011年4月27日
湘南工科大学 
総 長 糸山 英太郎
追伸
本学の安全確保については施設の耐震化は10年以上前から行っており、大地震・災害対策の行動マニュアルも作成しています。また、様々な災害に対応した避難訓練も計画しております。
学生諸君は学生証と一緒に災害・緊急時対応カード(水に濡れても破れない特殊な紙で製作)を携帯しています。
また、電力の確保には4号館屋上に大規模なソーラーパネルが備わっています。
学生の安全を守ることに力を惜しむようなことがあってはなりません。本学はこれからも学生の安全確保にはさらなる努力をしていきます。

総長所信 2011年度新入生へ、総長からのご挨拶(2011年3月28日)

新入生諸君へ

東北地方太平洋沖地震により東日本各地が甚大な被害を受けました。
被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

東北地方では余震が未だ続き、神奈川を含む地域でも大規模停電、交通機関の乱れ、原発事故の影響も加わり予断を許さない状況が続いています。
本学の災害対応能力は私が直接指揮し高めてきたものですが、新入生諸君の安全を第一に考えるべきと判断し入学式の中止を決めました。
諸君はこの門出を晴れがましい気持ちで待っていたことでしょう。この私も諸君らに初めて会う日を楽しみにしていたので非常に残念に思います。

その代わりに湘南工科大学新入生諸君へ、この一文をもって総長としての思いを伝えます。
諸君は既に理系の分野に焦点を絞り、この湘南工科大学に入学します。
自らが興味を抱き、自らの意思で専門分野の学問を掘り下げて研究をするという大学での勉強は、これまでには得られなかった新たな楽しさを感じることになるはずです。
また諸君には自分がどのような仕事で社会に貢献をしたいのか、思い描く人生を築きあげるためには今何を学ぶべきなのか、ということを真剣に考えながら進んでいってほしいと思います。
今回の地震では、自然の力の凄まじさに現代テクノロジーが及ばず、技術者が矜持を失っていると見ている諸君もいるかもしれません。
しかし、技術者は自らが携わるテクノロジーに誇りを持ち、最後まで責任を全うしようとすることで社会に貢献しているのです。
そんな凛々しい技術者を目指してください。
もう一つ、ご両親の諸君らに対する思いに気づいてください。
諸君はご両親に長い間甘えさせてもらってきたわけですが、そろそろご両親がどんな気持ちで君たちを大学に進ませてくれたのかということに思いが至らなければいけません。
ご両親に対する感謝の気持ちは、学びの大きな原動力となるはずです。

本学において高い志と感謝の気持ちを培ってください。
被災地の復興と新入生諸君が湘南工科大学で明るく楽しく奮闘してくれることを祈念します。



2011年3月28日
湘南工科大学
総長 糸山英太郎

剛直

学生・院生諸君及び御父母各位並びに本学の同窓会諸氏と本学教職員各位におかれては、各人それぞれの夢を持ち、高い目標に向かって、日々悔いのない時を過ごされていると確信している。

私は、2004年4月、湘南工科大学を客観的に眺めかつ自分の信念を再確認するため、学長職を辞し、1年余が過ぎようとしている。糸山政経塾の塾長として別の意味で後進の者への教育に専念しており、日々、激しく変わり、何が起こってもおかしくない社会情勢の中で、これからの若手経営者・若手政治家たるものはなぜに生きていくべきかという生々しい教育を実践している。

決して、諸君達のことを忘れている訳ではなく、我が国の教育のあり方、特に大学・大学院という高等教育のあり方と21世紀の日本の歩むべき道との関係を考え、湘南工科大学としての教育理念である「人間味あふれる中堅技術者」の人間像について熟慮しているところである。

「木を見て森を見ず」という喩えの心境で湘南工科大学について色々なものが見えて来たという気がしている。その中で、諸君へのメッセージとして、自分の好きな言葉の1つである、タイトルに掲げた「剛直」という言葉にいきあたった。

世の中では、実に色々なことが自分の身の回りにおこることは当然である。それにどのように対処するかまた、どのような決断を下すかは、その時々の環境条件に左右される。しかし、結局のところ自分の心に忠実になることであり、人より抜きんでることになるのではないかと思う。その意味をこめて諸君には「剛直」に生きてほしい。物事に積極的にチャレンジし、自分を磨いてほしい。その場が、自分にとって厳しければ厳しいほど一時的に敗れることはあっても「剛直」をつらぬき通しておけば、次のチャレンジの場にはそれは活きて来るものだ。