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博士前期課程1年鶴窪さんのレター論文が電子情報通信学会誌に掲載されました

工学研究科博士前期課程1年鶴窪淳さん(電気情報工学専攻・渡辺重佳研究室所属)が書いた論文「サブスレッショルド領域(※)で動作する低電力LSIの高速化の基礎検討」が、電子情報通信学会論文誌C(エレクトロニクス)6月号に掲載されました。電子情報通信学会は、電子・情報・通信の研究技術者で構成され、全国で3万人を超える日本有数の大規模な学会です。

この論文は、学部生時代に鶴窪さんが書いたもので、卒業論文を要約したレター論文です。レター論文は2ページと文章量は少ないものの、速報性と完成度が高くなければ学会誌への掲載は難しいとされています。

「日本ではまだサブスレッショルド領域で動作する低電力LSIの高速化研究はすすんでおらず、その新しさが評価を得たのではないでしょうか」論文作成を指導した渡辺教授は振り返ります。

鶴窪さんと渡辺教授との出会いは、鶴窪さんが情報工学科3年生の頃に受講した「システムLSI」の授業でした。「自分はソフトウェア開発に向いてないかもしれないと感じていた頃で、渡辺先生の授業を受けてハードウェアにも興味を持ちました」と鶴窪さん。



鶴窪さんは渡辺研究室に入り、4年生の春、渡辺教授から1冊の英文書籍『SUB-THRESHOLD DESIGN FOR ULTRA LOW-POWER SYSTEMS』の翻訳をすすめられました。サブスレッショルド領域の研究は新しいだけに、英文の参考文献しかありません。英語がとても苦手だった鶴窪さんにとると数ヶ月かけての大変な技術翻訳でしたが、この作業をとおして卒業研究のテーマを決めることができました。

研究をすすめる中、鶴窪さんはそれまで定説とされていた遅延時間とエネルギーの公式に違和感をもちます。渡辺教授に相談し、気になりながらも卒業研究の中間発表を終えて1週間ほど経った頃、アメリカのマサチューセッツ工科大学から発表された論文が、鶴窪さんの違和感を証明しました。

すでに10月を過ぎた頃でしたが、結局、鶴窪さんは新しい公式で全てを計算しなおし、渡辺教授から何度も赤書き訂正を受けながら100ページ近い卒業研究論文を書き上げました。この卒業研究は、3月に筑波大学で行われた情報処理学会全国大会でも発表されています。

渡辺教授:「研究って諦めないことです。苦手な翻訳を彼が諦めていたら研究テーマも決まらなかったし、彼が違和感をもったことで、私も他の文献を探さなければ新しい公式には気づかなかった。そして、10月と遅い時期での再計算や、完成度の高さが求められる論文作成を彼が諦めていたら、卒業研究論文も今回の学会誌掲載もなかった」

鶴窪さん:「渡辺先生がいつも丁寧に対応してくださったので、もっと頑張らなきゃと思えました。学会誌掲載は嬉しいですし、今回の研究で良い結果が出たDTMOSについて、今後はより深く研究していきたいです。」

高校は普通科出身で、パソコンもプログラミングも詳しくなかったという鶴窪さん。学会誌掲載はキャリアの長い研究者でも難しく、学部生の論文が掲載されることは、本学では珍しいケースです。鶴窪さんのコツコツとした努力と、研究意欲を引き出し、支えてくれた恩師との出会いが今回の成果をもたらしたようです。若き研究者の今後が期待されます。




※サブスレッショルド領域とは、通常トランジスタが動作しないしきい値電圧以下の領域の事。論文ではこの領域で漏れ電流を用いて動作する新しい方式の研究を行い注目されています。

鶴窪淳さん

掲載されたレター論文と研究テーマに決めるきっかけとなった英文書籍『SUB-THRESHOLD DESIGN FOR ULTRA LOW-POWER SYSTEMS』