「まちだサポーターズ」の取り組みは、スポーツイベントを契機に、地域の他のイベントへの参加機会を提供するなど、単発的なイベントを超えて持続可能な地域活動モデルを築くことに成功している。この活動は、スポーツにとどまらず、健康・福祉、環境、防災など多様な分野と連携し、地域住民の関心やニーズに応じた活動機会を提供することで、地域社会への貢献と新しいつながりを生み出し、参加者自身のウェルビーイング実現にもつながっている。その主なポイントを以下にまとめる。 ① 行政の積極的な関与によるボランティアレガシー体制の構築 本事例の成功の背景には、市役所のスポーツ振興部門が中心となり、外部のボランティアコーディネートの有識者と連携して持続可能な組織体制の構築を進めたことがある。メガイベント終了後もスムーズに活動を継続できるよう、設立当初から行政が積極的に運営に関与し、専門家の伴走支援をもらいながら取り組みを進めてきた。また、行政が事務局の機能の中心を担っていることで、ボランティア活動の機会が集約され、適切に調整・伝達する仕組みが整備され、参加者が安心して活動に集中できる環境が提供されている。事務局が、イベント主催者と登録者の間に立って調整役を果たし、全庁的なボランティア活動の集約を促進している点が特徴である。このようなきめ細かな運営体制が多様なボランティア活動の基盤となっている。 ② 多様なフィールドでの活動と地域社会への貢献 まちサポは、活動当初の目的であるスポーツ分野に限らず、市内の多様なフィールドにおいてボランティア活動を展開している。地域イベントや福祉分野、環境活動など、幅広いテーマで市民と連携し、地域課題の解決に貢献している。このことが、住民が主体的に参加しやすい仕組みにもつながっている。また、活動の魅力を効果的に発信し、参加意欲を高める工夫を行うことで、新規参加者の獲得と地域全体で活動を支える文化の醸成につながっている。これにより、活動に参加するメンバー自身が「元気になる」「人生が豊かになる」といった好循環を生み出しており、地域社会のコミュニティ形成に重要な役割を果たしている。 ③ 自主的なネットワーク拡大と「まちサポ」ブランドの形成 2021年には設立総会を開催し、自己決定型の組織へと運営体制の強化・拡充を行い、「㎡T(エムエムティー:旧まちサポ会議、みんなでもっと楽しく会議)」を開催し、活動状況の報告や改善提案に関する意見交換を行うことが、会員間および主催者との交流を促進と連携体制の構築につながっている。また、一部の会員は主体的に、市外や都外で開催されるスポーツ大会や研修などに参加し、自己研鑽に努めるとともに、交流や情報交換も行っている。このような取り組みにより、メンバーは新しい知見を得てネットワークを広げ、活動の質を向上させている。さらに、「まちサポ」という名称がブランド化され、地域内外での認知度が高まっている。これにより、地域のボランティア活動のロールモデルとして機能している。 今後、持続可能な活動を維持するためには、効率的な事務局運営や主体的な事務局運営との担い手の育成とともに、特に若い世代が継続的かつ主体的に参加できる環境づくりの拡充が重要である。事務局における人材面や財政面での負担が今後の課題になってくることから、適切な役割分担を検討しながら、会の緩やかな自立を図りつつ、次のフェーズに向けた持続可能な体制づくりを進めていく必要がある。 (1) まとめ (2) 持続可能な運営体制の確立に向けた課題と展望 総括 12
元のページ ../index.html#15