川崎フロンターレのボランティア組織は、1997年に設立されたクラブの活動支援団体であり、ホームゲームの運営にとどまらず、地域イベントの企画運営や医療施設への訪問など、多様な活動を展開している。これにより、地域社会との結びつきを深めるとともに、クラブの発展にも大きく貢献している。 本組織の特徴は、ボランティアに対する高い裁量権と主体性の尊重にある。一般的に、ボランティア活動は補助的な役割にとどまることが多いが、本組織では、ボランティアが自ら考え、柔軟に活動できる体制が整えられている。その中核となるのが「チューター制度」と「リーダー制度」である。この制度では、ボランティア同士に上下関係はなく、役割を固定せずに状況に応じて柔軟に対応する仕組みが採用されている。その結果、ベテランと新人の間にもフラットな関係が築かれ、互いに学び合う文化が醸成されている。さらに、この流動的なマネジメントにより、組織の規模が拡大しても一体感を維持できる点が強みとなっている。 このように、ボランティアへの信頼と裁量を重視した運営体制は、固定メンバーに依存せず、多様な人材が参加しやすい環境を生み出している。多くのボランティア団体が直面する「参加者の固定化」という課題を防ぐ有効な仕組みとして参考となるモデルである。 ホームゲームの運営を中心に、地域に根ざした多様な分野に広がる。試合時には、チケットチェックやグッズ販売、イベント補助などを担当し、運営を支えている。また、病院訪問や地域イベントへの参加を通じ、クラブと地域の結びつきを強化。さらに、物産展などの独自のイベントにも関与し、クラブの魅力発信にも貢献している。年間延べ149日の活動のうち、Jリーグのホームゲームは20日で、 残る129日は地域イベントで活動を行っている。 活動の様子① 活動の様子③ 活動の様子② 22 川崎フロンターレボランティアの特色 主な活動内容 設立経緯:プロスポーツチーム設立に伴い設置 人材確保:市民および周辺自治体からの参加 活動継続:スポーツ領域以外の活動拡大 運営体制:企業による運営【団体概要】設立年1997年運営主体株式会社川崎フロンターレ登録者数340人(2024年)主な財源株式会社川崎フロンターレ予算 事例3.川崎フロンターレボランティア 柔軟なマネジメントが生む、持続可能なボランティア組織 ~主体性を尊重した参加者の固定化を防ぐ仕組み~ 川崎フロンターレボランティア
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