2024年度 調査報告書
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1 山口 洋典、(立命館大学 共通教育推進機構 教授)、山田 一隆(東海大学 文理融合学部 教授)、滋野 正道(龍谷大学 心理学部 講師) 田鶴浜スポーツクラブは、石川県における総合型地域スポーツクラブの先駆けとして、1999年に設立された。「いつでも」、「どこでも」、「誰でも」をモットーに掲げ、「笑顔のある田鶴浜のまちづくり」をビジョンとし、住民の健康づくりと地域活性化を目的に、多世代が交流できる場を提供しながら、地域の課題解決に取り組んできた。設立から20年以上が経過した現在、同クラブの活動はスポーツ振興にとどまらず、地域の支え合いの基盤としての役割を果たしている。 特に、令和6年能登半島地震では、同クラブが指定管理者となっている体育館が避難所となり、長年培われたクラブつながりが発揮された。その結果、『奇跡の2ヵ月』と称される温かな避難所運営が実現し、住民同士の支え合いの力が示され、震災復興や今後の地域づくりに向けた支え合いのネットワークや更なるボランティアの活動体制が築かれつつある。 左:理事長 内田氏 右:事務局 長田氏 登半島地震の発災直後から田鶴浜地域に入り、外部の視点から支援に携わってきた3人の研究者1とともに、クラブの沿革と変遷を振り返る。さらに、発災直後からの取り組みを概観しながら、総合型地域スポーツクラブが地域連携のハブとして果たす役割や、スポーツを契機とした地域ボランティア活動の広がりや、その持続可能な仕組みについて、各専門家、意見も踏まえながら考察する。 本調査では、このような地域復興とまちづくりの源泉となる「地域力」がどのように生み出されるのかを明らかにすることを目的とする。具体的には、多様な主体が参画し、地域が直面する多様な課題に対する解決策を生み出していく過程を整理するとともに、そのための基本的な考え方、促進要件、環境条件などを検討する。 調査にあたっては、設立当初からクラブ事業に関わっている理事長の内田一哉氏、事務局の長田次夫氏の両 名および、コミュニティやまちづくりの専門家であり、能41 1.はじめに 多様な担い手の確保・育成モデルスポーツ領域以外への活動拡大モデル平時の活動を有事に活用するモデル【団体概要】設立年1999年運営主体田鶴浜スポーツクラブ登録者数417人(2024年度)主な財源市の委託事業(50%)自主事業(50%) 事例6.田鶴浜スポーツクラブ スポーツを通じて築く地域住民の絆と 住民主体の活動が生み出す新たな地域復興モデル 田鶴浜スポーツクラブ

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