な地域再生は難しく、住民自身が地域に関心を持ち、主体的に関わり続けることが不可欠である。そのためには、人材育成を進め、地域の主体的な力を高めていく必要がある。 さらに、震災後の地域活動において、コミュニケーションの重要性が改めて認識された。震災を経験した住民は、日常的な情報交換や迅速な問題対応を通じて、地域内での円滑な意思疎通の必要性を強く実感した。この意識の変化は、今後の地域活動において、住民同士の信頼関係を築く基盤となる。 震災後、地域の課題が濃密かつ急速に顕在化した。特に、震災後の地域のつながりをどのように維持するかは大きな課題である。例えば、2025年1月1日の追悼集会では、「静かに過ごすべき」とする意見と「みんなで集まることが大事」という意見が対立した。ただし、こうした非常時に直面した課題は、平時における地域スポーツの活性化を図るためのスポーツイベントについても、「運動で元気を出すべき」という意見と、「疲れるだけだ」という意見が交錯している。しかし、このような活動を通じて新たなつながりが生まれる可能性もある。 そのような中、地域の活力を取り戻すため、役員の中で決め、10月に運動会が開催した。震災後、運動会開催に否定的な意見もあったが、「ここで中止すると二度と復活できない」という思いから開催に踏み切ったと内田氏は語った。参加者は減少したが、地域にとって人が集まる場の重要性を再認識する貴重な機会であり、今後も続けていく予定である。さらに、スポーツクラブの活動が地域のつながりを取り戻す試みとして注目されている側面もある。震災後、フィンランド発祥の生涯スポーツの1つであるモルックという競技が注目され、新たな交流の手段として活用されている。専用のコートを必要とせず、ある程度の空間があればどこでも実施できるため、地域の新たな交流ツールとして期待されている。 〈インタビューリスト〉 2025年1月26日(日) 10:30~13:00 ●内田 一哉さん(田鶴浜スポーツクラブ 理事長) ●長田 次夫さん(田鶴浜スポーツクラブ 事務局) 〈インタビュアー〉 ●山口 洋典(立命館大学 共通教育推進機構 教授) ●山田 一隆(東海大学 文理融合学部 教授) ●滋野 正道(龍谷大学 心理学部 講師) 〈調査報告担当〉 ●武長 理栄(笹川スポーツ財団 経営企画グループ) ●荒尾 裕子((株)クレメンティア 代表取締役) 避難所での活動の様子① 避難所での活動の様子② モルックイベントの様子 (2) 震災から学ぶ、地域活性化を支えるスポーツクラブの力 47
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