わばご近所の底力となって地域全体の活力として位置づくことになる。 もちろん、田鶴浜スポーツクラブによる充実した地域スポーツ振興がなされてきたからと言って、田鶴浜に明るい未来が約束されているわけではない。本インタビューの終盤、「好循環モデル」の枠組みに目を向けながら、事務局の長田氏は「田鶴浜スポーツクラブだけではいかん」と、地区内の別組織との連携・協力を強化しなければ、と語られていた。この様子から、田鶴浜スポーツクラブの地域での振る舞いは、スポーツで言えば、中でも野球のポジションで言えば、ピッチャーやヒッターではなく、キャッチャーと見立てている。それは試合の流れに応じてグラウンドにいる選手たちの位置を調整しつつ、ピッチャーにサインを送り、どんなボールでも正面で受け止め、必要なポジションにボールを送る、文字どおりのコーディネーターの役割を果たしているためである。 (4) まとめ:「受援力」を高める地域づくりへ 2010年に内閣府は「地域の『受援力』を高めるために」というパンフレットを作成し、災害時に被災地外からやってくるボランティアの支援を受け入れるには、「地域内でお互いに顔見知りになっておくこと」など「平時に高める」ことで、外からの知恵や力への抵抗感を抱かないようにすることが重要であると訴えている。とかく、地域振興にはコーディネーターに支援力が求められる傾向にあるが、災害時のみならず非日常と日常とのあいだを結ぶうえでは、むしろ多様な人々を受け入れていく受援力の向上もまた肝要となるだろう。 以上のことから地域スポーツと地域活動の融合を図りつつ、平時も災害時にも支援と受援の双方のコーディネーターとなっている田鶴浜スポーツクラブの取り組みは、他地域の地域づくりにおいても大いに参考となる事例である。何より、地域スポーツと地域活動の融合を通じたボランティア活動の好循環モデルの構築・推進は、総合型地域スポーツクラブの地域における新たな役割の広がりも期待される。 50
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