3 組織運営を段階的に移行した事例として、うつくしまスポーツルーターズ(日本スポーツマスターズ福島大会のボランティ4 ハイブリッド型組織の事例として、FC東京・スポーツボランティアなどがある。 ボランティア自主運営型は、メンバー自身が運営に関与することにより、活動内容を主体的に選択でき、やりがいのある活動の場を自ら創出できる点で、モチベーションを維持しやすい特徴がある。ただし、運営は意欲と能力があり、かつ多くの時間を割ける一部のメンバーに依存しやすく、また活動資金も限られるため、安定的かつ持続的な組織運営が難しくなる場合がある。 行政・企業支援型とボランティア自主運営型に共通する課題として、メンバーの固定化や高齢化、リーダー人材の不足が挙げられる。これらはスポーツボランティアに限らず、全国の地域活動団体に広く共通する構造的課題である。 こうした状況を踏まえると、行政・企業支援型からボランティア自主運営型へと段階的に移行する方法も有効となる。例えば、大規模スポーツイベントを契機に活動したボランティアを人材バンクとして組織化し、行政やその委託先が当初の事務局を担うことで立ち上げ、その後、研修や実践機会を通じて人材育成を図り、NPO法人化や任意団体化などを通じて自立運営へと移行する流れである3。こうした運営の段階的移行は、行政による中長期的な自立支援の一形態として有効であり、制度設計上も参考にすべきアプローチである。 さらに、近年では、行政・企業支援型とボランティア自主運営型の中間に位置づけられるハイブリッド型も広がりつつある。例えば、民間団体との協働関係を基盤としながら、独立したボランティア組織として自主的な活動を行う形態である4。このようなケースは、一定の支援を受けつつも主体性を保ちながら活動することが可能であり、地域の実情や支援リソースに応じた柔軟で持続可能な運営形態として注目される。 このように、ボランティア組織の安定的な運営には、組織の成熟度や地域の条件に応じて、段階的移行型やハイブリッド型といった多様な運営形態も含めて適切に選択・支援していく視点が重要である。行政としては、単なる立ち上げ支援にとどまらず、人材育成・財源確保・組織の自立支援を一体的に設計することが求められる。 (4)持続可能な地域ボランティア組織の構築に向けて 本研究の事例分析を通じて、スポーツをきっかけとした持続可能な地域ボランティア組織の構築のためには、以下の4点が重要であることが示唆された。 ①スポーツイベントなどの「レガシー」が地域に定着する仕組みの構築 一過性の大規模イベントに限らず、既存のスポーツイベントのリニューアルや地域スポーツ組織の発展・拡充を契機として、継続的な地域ボランティアの仕組みを構築していくことが重要である。具体的な施策は以下のとおりである。 ・ 多くの人の関心を集めやすいスポーツを活用したボランティア人材の発掘と参加促進 ・ スポーツイベントに加え、日常的な地域スポーツ活動や、スポーツ以外の福祉、防災、文化などの多様な活動機会の創出と提供 ・ 多様な活動機会を提供するための政策分野を横断した部門間連携の推進 ・ 年代や性別、関心、意欲などが異なる人々が、それぞれの能力やライフスタイルに応じて活躍できる柔軟で魅力あるボランティア活動の場づくり ・ 行政や企業に依存しすぎない、ボランティア自身が主体的に運営に関わる組織体制の整備と支援 アが核となり設立されたボランティア組織)などがある。 53
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