(1)スポーツを起点とした地域ボランティア連携モデルの構築と実装に向けて 本研究で得られた知見を踏まえ、図表6にスポーツボランティアをきっかけとした地域ボランティアの連携モデルを示した。これは、スポーツボランティアをきっかけに地域ボランティア活動が分野横断的に広がり、地域全体の共助体制へと発展していくプロセスをモデル化したものである。 まず、(A)スポーツイベントをボランティア参加の「入口」とした新たな人材の発掘が起点となる。これは、特定の競技大会や地域スポーツイベントが、初めてのボランティア参加の機会となり、幅広い市民が活動に関与するきっかけとなることを示している。次に、発掘された人材が、図中央のように(B)スポーツを通じて得た経験をもとに、福祉や環境、まちづくり、子ども、文化、安全など、他分野のボランティア活動に「流入」していく様子を示している。ここでは、スポーツのボランティア組織が多分野との接点を持つことで、ボランティア人材が分野を越えて循環する基盤が形成される。このような人材の移動・交流が進むことで、(C)分野を超えたボランティア活動組織の連携が生まれる。これは、スポーツを起点としながらも、地域内の複数のボランティア分野が対等な関係で連携し、共通の課題に協働で取り組む体制を意味している。 さらに右側では、そうしたネットワークが平時の活動にとどまらず、(D)有事(災害時など)における分野横断的な協働支援体制の構築へと展開する可能性を示している。実際に、災害対応では、日頃の連携の有無が、地域内外の支援の迅速性・柔軟性に直結する。 このモデルは、スポーツを入口としたボランティア人材の「発掘」から「流入」「連携」「協働」へと展開する一連の流れを可視化するものであり、地域における持続可能なボランティア基盤の形成と、災害時も含めた多分野の共助体制づくりの方向性を示すものである。 このモデルの実装によって、以下のような長期的な成果が期待される。 ①地域のボランティア活動の活性化 スポーツを起点とした多様な人材の参加により、地域ボランティア活動の間口が広がる。これにより、世代や価値観の異なる多様な人々が地域活動に積極的に関与するようになり、担い手の高齢化や固定化、慢性的な人材不足といった課題の解消が進む。 ②市民協働によるまちづくりの推進 スポーツ団体を核に、福祉・環境・子育てなど多分野のボランティア組織が連携し、さらに行政や企業との協働も進むことで、地域全体での課題解決に取り組む土壌が整う。その結果、市民一人ひとりが主体的にまちづくりに参画する機会が増え、市民協働による持続可能な地域社会の実現が期待される。 ③災害時における分野横断的な支援体制の構築 平時から分野を越えたボランティア組織の連携基盤を形成しておくことで、災害などの有事においても迅速かつ柔軟な支援体制が構築可能となる。特に、地域住民による顔の見える関係性を基盤とした支援は、ニーズを的確に把握し、効果的な対応を可能とする。防災や復興支援においても、こうしたモデルは大きな力を発揮する。 55 3.スポーツをきっかけとした地域ボランティア連携モデル
元のページ ../index.html#58