2024年度 調査報告書
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であり、活動の広がりと定着の取り組みとして行政やクラブとの連携体制、リーダー育成制度、若年層の参加促進、活動の多様化や楽しさを重視した運営など、各地域が自らの特性に応じた持続的な活動基盤を構築していた。出口(成果)としては、地域課題の解決や多世代交流、災害支援、地域福祉や教育との連携など、スポーツの枠を超えた広がりが生まれており、参加者自身の成長やウェルビーイングの向上にもつながっていた。特に、田鶴浜スポーツクラブのように震災対応を通じて地域の結束と支援体制を再構築した事例や、若年層の育成に注力しているSV2004のような事例は、持続可能な地域ボランティアのあり方を示唆している。 2.持続可能なボランティア組織の構築に向けたキーポイント スポーツを契機とした地域ボランティア組織の持続的な運営に必要な要素を明らかにするため、6つの事例を分析した。その結果、運営主体の違いにかかわらず、継続的な仕組みづくりと地域との関係性の強化が共通の鍵であることが示された。具体的には、①スポーツイベントなどの「レガシー」が地域に定着する仕組みの構築、②スポーツを通じた他分野のボランティア組織との連携、③リーダー/コーディネーター人材の育成、④定期的な活動の振り返りと理念の共有が重要な要素として示された。 3.スポーツをきっかけとした地域ボランティア連携モデルの構築を目指して これらの知見を踏まえ、本研究では、スポーツを媒介とした「地域ボランティア連携モデル」の構築を提案する。特に、スポーツボランティアが地域の防災や福祉活動と結びつくことで、災害時にも機能する支援体制を確立できる可能性が示唆された。田鶴浜スポーツクラブの事例では、平時からの地域ネットワークが災害時の迅速な支援活動につながったことが確認された。今後、自治体や地域現場での実証研究を通じて、このモデルの有効性を検証し、政策提言へとつなげていく。 6

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