学報79号
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SHONAN INSTITUTEOF TECHNOLOGY 機械工学科熱力学と計測・制御を軸に、世の中に役立つモノを作り出す 熱力学と計測・制御をベースに、特に「医療介護福祉」「農業」「車両設計」の3分野への応用研究に取り組んでいます。医療介護福祉分野では、車いすバスケットボールの競技や練習をサポートするための位置推定技術を開発しています。LED照明を、人間の眼には分からない程度に、ある特定のパターンで発光させ、その中に情報を埋め込みます。その光を車いすに取り付けた全方位カメラで撮影すると、LEDの写っている位置と発光パターンに埋め込まれた情報から、車いすの位置を推定することができます。この技術を使うことで、試合中のプレーログをとり、戦略立案することやテレビ中継で選手の動きに合わせて情報表示をすることにも活用できると考えています。 本研究室では、機械や機構の設計のみならず、電子回路の設計、ソフトウェアの開発も行っています。モノづくりの最初から最後まで、なるべく多くの技術に携われるようにしたいと考えています。また、自分がこれまでに楽しんできたように、学生にも機械工学を楽しんでほしいと考えており、学生から「やってみたい」と声が上がった研究はできるかぎり取り入れるようにしています。 電気電子工学科宇宙を研究フィールドに、無線回路を設計する 近年、軌道上にある人工衛星を活用して、インターネット通信網の整備されていない国にインターネットを届けようというプロジェクトが進められています。そこで活用が期待されているのが、衛星同士をつなぐ「衛星間通信」という技術です。レーザー光を使った最新の衛星間通信では、ビーム位置を合わせるのが難しいという課題があり、つながりやすい無線通信も併用したいというニーズがあります。そこで、本研究室では、データ速度を高速化するためのミリ波帯の無線技術の研究開発に取り組んでいます。衛星通信は、大きな電力で出力する必要があり、進行波管増幅器という真空のチューブが使われています。しかし、進行波管増幅器はパワーが出る一方で壊れやすいという問題もあり、研究室ではトランジスタの増幅器を設計し、ミリ波帯を使った無線通信を行う場合の無線機器の回路設計などを行っています。 宇宙開発では、無線通信技術が重視されていますし、家電にも無線通信機器が搭載されています。研究室から無線通信技術と半導体やプリント基板などの回路設計に強いエンジニアを多く送り出したいと考えています。 情報工学科災害時の群衆の避難行動をシミュレーションする技術 災害に強い街づくりを実現するためには、現実の災害発生時に数万人もの群衆がどのように行動するかを把握しておく必要があります。研究テーマの「マルチエージェント社会シミュレーション」では、そのような災害発生時などの群衆の行動に着目したシミュレーションを行っています。多くのパラメータを入力した上で、膨大な量のシナリオについて計算を行います。エリアや周囲の環境によって変わる群衆の動きをシミュレーションすることで、避難所の場所や誘導の対策を考えることに役立ちます。また、現在、災害のない平常時の人の動きに着目し、人の誘導やエリアマネジメントに資することができるシミュレーションを検討しています。この研究については、センシング技術を得意とする企業、大学研究者、都市環境・開発の専門家らと協働していきます。 大規模シミュレーションができることは、本研究室の一番の特徴です。実際の街や商業施設を想定したプロジェクトも多く、学生たちにも関わってもらい、コンピュータシミュレーションを通して、人や社会の役に立つ技術者を目指してほしいと思っています。より高度な専門知識と技術が学べる幅広い分野の研究室から一部をご紹介します小島 一恭 准教授[ 研究テーマ ]ヒトやモノにとって快適な空間の設計加保 貴奈 教授[ 研究テーマ ]衛星間通信網を利用してアフリカなど後進地域ともインターネットをつなぐ研究浅野 俊幸 教授[ 研究テーマ ]人の知的学習を通したマルチエージェント社会シミュレーション04THE SHONANTHESHONAN

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