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コンピュータ応用学科 高橋 宏 教授


キカイとヒトのスキマを埋める
安全・安心に利用できる自動運転システムの実現を目指す

自動車メーカーで車の安全性に関わる研究に携わってきたコンピュータ応用学科の高橋宏教授。 人がどのように事故に至る危険性を認知するのか―その基礎的な研究を通して より安全で快適な車の自動運転システムの発展に貢献しています。

安全で快適な自動運転とは?

完全な自動運転を実現する技術進化の途中段階として、自動運転システムの異常時や、自動運転では対応できない不測の事態が発生したときに、自動運転システムが、ドライバーに運転操作を変わってもらう「テークオーバー」という考え方があります。

「テークオーバー」が頻繁に発生すれば、自動運転車両を利用する際の安全性・利便性、およびシステムに対する信頼性が低下します。よって、万が一の場面で、ごくまれに「テークオーバー」が発生するのですが、その時に運転操作が自動運転システムからドライバーへ、安全かつ円滑に引き継がれる必要があります。

また、実際の路上ではさまざまな状況が想定されます。自動運転システムといえども、その進化段階で自動運転システムと人間のドライバーがうまく協調していく必要があります。また、完全に自動運転になったとしても、利用している人間が安心して運転を任せられるような自動運転でなければならないのです。

レジリエンスなシステムを構築する

レジリエンス(Resilience)とは、「いかなる状況でも柔軟に対処できる能力」を意味する言葉です。さまざまな状況に対応する必要がある自動運転システムにはレジリエンスが求められます。

たとえば、プロフェッショナルなドライバーは、歩道を歩いている歩行者や、車の前後左右などにも気を配る、いわゆる「かもしれない運転」を実践しています。自動運転ではシステムがこの役割を担って、状況に応じてテークオーバの準備をする必要が生じます。

こうした場面で、自動運転操作を円滑にドライバーへテークオーバーするための技術の一つが、危険かもしれない「可能性情報のドライバーへの提示技術」です。飛び出しの多い交差点や、事故が多いカーブなどに差しかかったときにあらかじめドライバーにアラームを出して注意を促しておくとことで、スムーズにテークオーバーができます。

しかし、アラームが多すぎると、アラームの効果は薄れてしまいますし、頻繁なアラームはわずらわしく、自動運転の快適さを損なうことにもなります。

レジリエンスな自動運転システムの実現のためには、頻回に発生する警報などをいかに効果的に、かつ、余計なお世話にならないようにドライバーに伝達することが重要になります。

見えているのに気がつかない情報を利用する

人間の視野は水平方向では左右100°まで見えるといわれていますが、色や形をしっかり認識できるのは視線から10°くらいの狭い範囲で中心視野と呼ばれています。それ以外は周辺視野と呼ばれ、中心視野ほど色や形ははっきり認識されていません。これは森の中で獲物を追いかけていた人類の祖先が獲得した能力の名残と考えられています。さらに、中心視野からの情報と、周辺視野からの情報は脳での処理方法も異なると考えられています。この性質を「可能性情報の表示」に利用する研究を進めています。

具体的には、ドライバーの周辺視野に情報を表示することで、意識下での注意を誘発しようとするものです。中心視野に可能性情報を表示すると、脳がしっかりと認知するためにドライバーは煩わしく感じますが、周辺視野に表示することであまりわずらわしさを感じることなく、テークオーバーに備えることができます。

研究の対象は「人間」

現在、ドライブシミュレーターを使った実験を行っています。周辺視野にアラートを示すときと示さないときで、テークオーバーの準備が的確にできるかを確認する実験では、周辺視野への可能性情報の表示が有効であることが分かりました。

しかし、実際の自動運転システムに搭載するまでにはまだまだ克服すべき課題があります。

課題の一つは、実際の自動運転ではいろいろな状況(situation-dependent)が想定されるためです。「想定外」をどれだけ少なくして、事前に対応するかは大きな課題です。

もう一つの課題は、実際のドライバーにはそれぞれ個性があり、人によって反応が違う(非エルゴード性)ことです。どのドライバーも同じように反応できるシグナルの表示方法の開発も必要です。

これらの課題を解決してはじめて、可能性情報の表示機能が自動運転システムに搭載されるのです。

シンプルに、愚直に、考え続ける

可能性情報の表示方法についての研究は、企業で行うには難しいテーマの一つです。このような要素技術の研究や基礎的な研究に取り組めるのは、大学ならではの魅力です。特に本学は、ユニークなテーマにも取り組みやすい学風です。

研究は、一つひとつ課題を解決していく地道な作業の積み重ねです。行き詰まることも珍しくはありません。そんなときは、原点に戻って考えます。そうすることで、問題解決の糸口が見えてきます。「愚直にシンプルに考え続けろ」という「KISS(Keep It Simple, Stupid)の原則」は研究を進める上でも有効です。

自分で仮説を立て、検証していく。それを自主的に行え、自ら学べるようになる。当研究室での卒業研究を通じて、それらを学び、身につけてください。

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