湘南から未来へ
湘南工科大学スペシャルサイト


工学部人間環境学科
Materials and Human Environmental Sciences
工学×医学
工学で医療に変革を臨床現場に直結する研究
シングルニードル透析の
効率的な装置の研究
医療機器は、機械工学や電気電子工学、材料工学、情報工学といった幅広い工学分野の技術と知識の集大成です。湘南工科大学では、これらの工学分野を横断的に結ぶ「医工学研究センター」を2024年に設立。本学科のほか、機械工学科、電気電子工学科、人間環境学科などの教員や学生が集まり、医療技術の進歩と安全性向上に貢献するための学際的研究を推進しています。
現在、医工学研究センターを拠点に、人工臓器に関連した研究が進行中です。例えば、腎不全の患者さんが行う血液浄化療法の一つである人工(血液)透析に関する研究です。通常は「脱血用」と「返血用」の2本の針を用いるダブルニードル(DN)透析が主流ですが、本学科では1本の針で行うシングルニードル(SN=単針)透析をより効率的に行う装置の研究を行っています。シングルニードル透析は、針を刺すのが1カ所に減るため患者さんの痛みやストレスの軽減につながる一方で、透析に長時間を要します。血液の行き来を切り替えるタイミングや血液を送り返す圧力、透析回路の長さなどの調整が有効であることが分かってきており、こうした点を反映したシングルニードル透析の効率的な装置が開発されれば、患者さんにとって治療法の幅が広がります。


血液浄化療法における
デバイスの研究
一方で、血液浄化療法におけるデバイスの研究も進めています。血液浄化療法は、血液中の不要物を体外で浄化し、きれいにした血液を体内に戻す治療法です。この過程では、血液が体外に出ると固まりやすいため、抗凝固薬を適切に使用する必要があります。当研究では、血液が通るチューブの振動を検知して抗凝固薬の使用タイミングを判断するデバイスの開発に取り組んでいます。この技術により、より効率的で安全な透析治療が可能になることを目指しています。
また、各メーカーが製造する血液ろ過器の膜面積などの特性を検証し、それぞれの特性を比較する研究も行っています。これらの研究は、臨床の現場に勤める技師から依頼を受けて始まったものです。臨床現場においてどのようなことが課題となっているかなど現場のリアルな声を聞きながら、臨床現場に直結する研究が行えるのは本学科ならではの強みです。こうした研究では、病院をリタイヤした血液浄化装置や個人用透析装置などを使用しています。医療機器の原理を理解していなければ、設定と違う現象が起きたときに対処できません。実際の医療機器に触れて実践的に学ぶことを大切にしています。


酸素ボンベを背負わず水中で
呼吸できる日が来る⁉
山梨大学・早稲田大学と協働で「液体換気療法」に関する研究を行っています。液体換気療法とは、酸素を多く含む液体を用いて液体呼吸を可能にする技術です。大量の水が肺に入ると直ちに溺水しますが、酸素が十分に含まれた液体であれば呼吸が可能で、動物実験でも実証されています。このように液体換気療法には酸素溶解度の高い液体が必要で、現在はシリコーンオイルという液体が候補の一つに挙がっており、多くの酸素を取り込むための最適な粘度バランスなどを検討しています。こうした液体を含め液体換気療法が確立できれば、液体で肺を洗いながら呼吸できる利点を生かして肺洗浄や全身やけどの治療などにも役立ちます。また、水中で呼吸できる「人工エラ」の研究も見据えています。シリコーンオイルを利用し海水から酸素を回収し、二酸化炭素を効率的に排出できる装置を製作し実験しています。人工エラが実用化されれば酸素ボンベを背負わず水中での活動が可能になります。
宮坂研究室では、この他にユニークなものとして、学生が「ピアスの穴を開ける際に痛くない針」の研究に取り組んでいます。この研究では、人体の代替としてやげん軟骨を用い針の太さや長さなどを検討しながら実験しています。また、機械工学科の学生も所属しており「生物的な動きを学んで、トンボの羽の特性を持つドローンの研究をしたい」と意欲的に取り組んでいます。このように本学科では、医療科学分野の研究だけではなく、「面白い」「やってみたい」と思う自由な発想を重視しながらイノベーションの創出を目指しています。
X-Tech LaboratoryLaboratory
【 未来を創造する研究室がここにある 】工学部 人間環境学科
宮坂 武寛 教授
大学院では化学工学を専攻し、透析液中の汚染物質をモニタリングするセンサーの開発などに取り組み、博士課程以降、医学系大学で研究職を務め、基礎医学を一から修めるとともに本格的に血液透析の研究を行いました。現在も取り組む血液浄化療法における患者さんの負担を軽減する研究をより推進していきたいと思っています。
中・高と吹奏楽部、大学では交響楽団に所属しトランペットを演奏。海外公演も行うなど力を入れていました。子どもが生まれて中断していましたが、市民オーケストラなどでそろそろ演奏活動を再開したいと思っています。
研究テーマ
血液浄化療法や液体換気法におけるデバイスの研究
専門分野
医用化学工学、血液透析