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氏原 陸大さん


※内容は2025年4月取材時
トヨタ自動車株式会社
クルマ開発センター
ビジョンデザイン部 UXデザイン室

氏原 陸大さん
工学部 総合デザイン学科 2024年3月卒業
湘南工科大学附属高等学校 技術コース 2020年3月卒業

 現在のお仕事の内容を教えてください
トヨタ自動車株式会社のクルマ開発センター ビジョンデザイン部 UXデザイン室に所属し、UXデザイナーとして勤務しています。
業務内容を一言で説明するのは難しいですが、簡単に言うと「体験価値をデザインする」部署です。例えば、クルマでいうとカーナビやオーディオ等を表示するマルチメディア、タッチパネル、メーターなどのグラフィックといった「プロダクト」をはじめ、見た目の格好良さだけではなく、ユーザーがどういう気持ちになるか、どうしたら居心地良くクルマに乗ってもらえるかといった「空間」のアイデア、ビジュアルまで、車内デザイン全般に携わっています。光を使った車内の演出など領域も幅広く、トータルでデザインしているといった感じです。
そのほかには、モビリティショーに出展するコンセプトカーのような、未来のモビリティのデザインをUXデザイン室発信でも行っています。さらに、「ブランディングデザイン」に関わる「ロゴ」や、どうすればお客様にワークショップを楽しんでもらえるかという「場」のデザインなど、広い分野で業務を行っています。もちろん軸は自動車ですが、広範囲に業務の枝葉は広がっています。
 車種ごとにターゲットや方向性が違う中で、広範囲な業務を整理、管理するのは大変ではないでしょうか
以前は、車、未来のモビリティ、イベントのグッズデザイン、リクルート関連など、ありとあらゆる業務をそれぞれが抱えていて煩雑になりがちでしたが、現在は、PM(プロジェクトマネージャー)が業務を管理してくれる体制になっているので安心して作業を進めることができています。
 学生時代の経験で役立ったことは何ですか
大学1年の後半に、UXデザインが専門の赤井良行先生(1)のもとで文具のコンペに応募し、5個くらい作品を作ったんです。そこで自分の作品を作ってまとめて応募・発表する「楽しさ」に気づき、多分そこから火が付いて、モビリティデザインが専門の髙野修治先生(2)のスケッチサークルでも絵を描くようになり、UX/UIの勉強を始めました。その後、堀川将幸先生や鈴木浩先生の指導もあり、モビリティのUXデザインに絞られていきました。
ちなみに、附属高校ではフットサル部でした。美術部だったことはないのですが、幼い頃から絵を描くことは好きで、かつては漫画家になりたいと思っていました。

インターンに参加しながら、授業の課題で自分の作品を作り、ポートフォリオもまとめて、みたいなことはずっと並行してやっていたので、多くのタスクを自己管理しながら同時に進める力は鍛えられたかもしれません。デザインのインターンは、初対面の人たちとグループワークをして、一緒に何かを作り上げていく作業があるので大変なんです。インターンに行くとレベルの高い学生がたくさんいて、とても刺激を受けました。どう戦えばいいのか、みたいなことが見えてくる。スケッチだけでなく、プレゼン用のスライドをより良くするために、グラフィックも勉強しなきゃならないし、アイデア力も鍛えなきゃいけない、と改めて気づかされました。

1)赤井良行先生:2021年度末 湘南工科大学 退職
2)髙野修治先生:2021年度末 湘南工科大学 定年退職
 在学中に好きだった授業は何ですか
好きだった授業は、断然「DP(総合デザインプロジェクト)」ですね。課題が出て、ターゲットを設定し、どんなことをすればその人たちが喜ぶのか、というストーリーを立てることもビジュアル作成も、全部好きでした。
この授業を通して、自分がやりたかったことは絵を描くこと自体ではなくて、どういうものが必要で、何が楽しくて、じゃあそれは実際何なのか、というところまで作って、それをプレゼンするまでの一連の流れだった、ということに気づいたんです。DPはすごい好きで、楽しかった!
また、髙野先生の「デザイン表現基礎」ではスケッチやプレゼン用スライドの作り方などを、鈴木浩先生の特別講座や産学連携講座では「モビリティデザイン」の基本についてご指導いただき、大変参考になりました。鈴木浩先生と初めてお話しさせていただいたのは、まだ先生がYAMAHA発動機で勤務されていた頃に、私の作り立てのポートフォリオをオンラインで見てもらったときだったと記憶しています。当時、大学2年の後期くらいだったと思いますが、早めに進路を定めて2年次にはポートフォリオ作りをスタートする必要があることを教えてもらいました。これは、学生のみなさんにも伝えておきたいです。企業での実践的な経験に基づく先生方のプロフェッショナルな教えは、現在のデザイン業務にも大いに役立っています。
 トヨタへの入社を決めた理由を教えてください
もともと「車だけ」の会社には興味がありませんでした。企業説明会に行って、ひとこと目に「車」が出てくる会社より、「モビリティ」が出てくる会社がよかった。移動をまじえた体験づくりや、モビリティカンパニーへの変革という会社の方針に共感し、トヨタに入社を決めました。
 自動車免許を持たない若い人たちも増えています。クルマの未来をどう捉えていますか
クルマの未来は決めなくていいんじゃないでしょうか。この先どう変化していってもいいと思うし、どうにでも変化すると思っています。その都度、描く未来は変わっていくと思う。世界中にいろいろな環境があり、いろいろな人がいるので、その人たちの未来を考えてデザインするのがいいのかなと思います。
トヨタ自動車が開発を進めている「ウーブン・シティ」(3)は実験的な話かもしれませんが、「移動」って人にすごく関わる分野で、タイヤがついた乗り物だけではないと思うんです。プロダクトだけでなく、人のコミュニティなのかもしれないし、街自体を変えなきゃいけないのかもしれないし、すべて含めて「移動」だと考えています。

3)Toyota Woven City|Toyota 
 これからの夢はありますか
入社してまだ1年余りですが、尊敬できるロールモデルも身近にいますし、働いていてかなり好きな企業なんです。上の立場の人たちが、下の人たちをリスペクトしてくれていることも感じます。自分が主張したいことの理由と背景はしっかりと持っていなければいけませんが、個性を出せる機会も多いので、働きがいがある会社だと思います。
所属しているビジョンデザイン部 UXデザイン室は、比較的若い社員が多いこともあってとても活気があります。今は目の前のことで精一杯ですが、あまり仕事と思って会社に行っていない感じも。仕事が楽しいです。
 仕事でのやりがい、手応えを感じた瞬間はありますか
今はまだ模索しながら仕事をしていますが、提案やアピールした内容を上司に認めてもらえて制作チームに参加できたりするような、一連の流れが生まれた時には達成感を得られます。次につながるような提案ができて、振られる仕事の幅を広げられたと感じられた時はすごく嬉しい。日々の会議、役員向けの大きな会議、所属部長に向けた発表など、社内でプレゼンする機会も定期的にあります。先日は、サイモンさん(デザイン統括部長 サイモン・ハンフリーズ氏 4)のいる場でプレゼンがあり、初めて統括部長と会話しました。そういう機会が入社1年弱の社員にもあるような環境です。

4)取締役・執行役員 Simon Humphries|Toyota
 在学生に伝えたいこと
学年ごとに伝えたいことは違います。
1年次は、自分もそうでしたが、何も考えずに好きなことをやればいいと思います。ただ、遊ぶにしても、自己成長につながるものであってほしい。新しい発見でもいいですし、こういう見方ができるようになったとか、何かにつながる遊びの方がいい。真剣に遊んでください。打ち上げやご褒美は、その後で。笑

2年次は、1年次で経験したことや遊んだことを自分の将来に生かすには、どうしたらいいかを考える時期かなと思っています。そんなに重くなく漠然とでもいいので。例えば「絵が好き」にもいろいろな道があります。私は偶然トヨタに進みましたが、文具でも、どこか社会のために役立てられないかな、というのを考え始めて、ただの遊びではなく、何か自己成長につながるようにした方がいいかなと思います。2年次くらいからは、ポートフォリオを作りましょう!

3年次は、もう、とにかくいろいろ頑張りましょう!

4年次で就職が決まった後は、みんな言うと思いますが、遊んだ方がいいです。私自身が学生時代に遊びきれなかった部分もあるので。今、勤務地の愛知に住んでいるのもあり、なかなか友人達とも会えず、社会人になるとまとまった休みを取るのも難しくなるので、土日の価値がよく分かりました。お金を払ってでも買いたいです。笑
湘南工科大学 附属高校の技術コースから入学した3期生です。7年間このキャンパスに通って、やりたいことはやり切りました。「やりたいことを、できること」に、することができたと思います。

在学時に産学連携授業で作成したパネルを持って。恩師のひとりである鈴木浩教授と氏原陸大さん

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