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工学部 機械工学科工学部 機械工学科

工学部機械工学科

MECHANICAL ENGINEERING

ロボット×ICT

リアル世界を支える
機械工学とデジタルの融合

災害救助も行えるロボット開発を目指す

工学部 機械工学科では、GPSなどのセンシングとAIを活用したスマートな自律移動機構の研究開発を行っています。一例として、屋外フィールドでの活用を目的とした自律移動ロボットを製作し、2021年に先進ロボット研究センターと共に初参加した“つくばチャレンジ”では自律走行80mを記録しました。

移動ロボットにおける自律走行技術の開発目的の一つとして、橋やトンネルなどの建設現場、石油コンビナートなどのような、人が車両に乗って点検・見回りをするような屋外の広範囲に及ぶ現場での作業を自動化することです。研究段階では、GPSで自己位置を計測し、周りの人や物体とぶつからないように制御しながら設定したコースを自律移動する実験・検証を街路環境で行っています。実は、GPSで正確に自己位置を測るのは、まだ難しい技術です。自己位置推定(Localization)は、ロボット自身が今どこにいて、どちらの方向を向いているのかなどを各種センサーのデータを組み合わせて推定しますが、人工衛星からの電波がビルや山、木などにより干渉を受けた場合は誤差が生じるため、あらゆる状況を想定した調整がロボット側で必要になります。そのため機械工学科では、さまざまな計測データを利用した走行制御のプログラミングにも取り組んでいます。

また風などの影響を受けない平坦な屋内で行われる実験やロボットイベントとは違い、段差や向かい風でも移動できるように、モーターやタイヤなどの駆動部にはパワーが求められます。部品選定ではその点にも考慮が必要です。将来的には、災害救助などにも役立てるようなロボットの開発も目指しています。

現実世界に軸足を置き
リアルとバーチャルを支える

ロボットが進化すると、生活は快適になるでしょう。介護・福祉分野や農業分野では、ロボットによる自動化・合理化が求められていて、ロボットの進化はこの先も続いていくはずです。その一方で、人間の仕事がAIやロボットに取って代わられるという危惧もあります。しかしさまざまな技術と知識を持っていれば、ロボットや機械を指示し制御する側になれるのです。それでは制御する側の分野として、情報工学ではなく機械工学のエンジニアを目指す理由はなぜか。技術の進歩により社会構造は日々変わり続けています。生活の中でのAIやメタバース利用は日常的になり、検索エンジンを使ったり、バーチャル世界で友人と集まったり、別人格のアバターで生きる人々もいます。日本が提唱する未来社会Society 5.0は、リアルとバーチャルの世界がシームレスにつながり、“経済発展”と“社会的課題の解決”の両立を目指すとされています。しかし、もしもリアル空間の機械が壊れてしまったらどうなるのでしょう。その世界はすべて停止してしまいます。機械工学は現実世界に軸足を置き、リアルとバーチャルの世界を同時に支える大切な基盤技術なのです。

スイッチを押せば入る電気も“エネルギー”といわれる資源が“電気”になって利用される過程に、機械工学で扱うモーターやタービンが必要です。また、モノを動かすには力学などの“物理法則”を知らなくてはなりません。力学を使って実際に設計する際には数学の知識も必要になります。計算上の理屈だけではなく、実際に使う時に「どう力が働くか」「どのように動くか」を理解し制御できる知識と技術を学ぶことができるのが機械工学科の強みなのです。

付加価値のあるリアル世界を支える
エンジニアへ

機械工学科では、機械系エンジニアに必要な技術と知識を“体験型科目”と“講義型科目”で1年次から並行して学修します。工作機械を使った機械加工から、CADによる設計・シミュレーション、機械のコンピュータ制御に必要なプログラミングまで、実習を通して体得します。さらに、生産システムの構築に必要な安全性や経済性の向上法、高精度・高能率化やリサイクルの手法なども学び、デジタルツインの活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応できる、有用な機械系エンジニアを育成するカリキュラムを用意しています。

モノをつくる時、そこにどのような“価値”を持たせることができるか、ということが、より重要になっていきます。

“形をつくる”だけの機械技術は、世界の中では埋もれてしまいます。形の上に頭脳をのせる、デザインを考える、快適さを追究する。そして世界を持続させるためには環境や省資源についても考えなければなりません。付加価値やアイデアを生み出す幅広い工学的センスを身につけた、リアルの世界を支えるエンジニアが、今求められているのです。

X-Tech LaboratoryLaboratory

【 未来を創造する研究室がここにある 】

工学部 機械工学科

湯澤 聡 教授

実家が町工場(鉄工所)だったため、鉄骨を溶接する、機械の試運転をする、といった普通の家庭ではしないような会話をよく聞いていました。その影響か、子どもの頃から電気工作や木工が好きで、モノづくりをよくしていました。
理系に進学しようと思ったのは高校生の時です。当時は高級車やパソコン、ビデオデッキ、ウォークマンなどの新しい家電が出始めた“ハイテクブーム”時代。日本の機械メーカーや電気メーカーが盛んに広告を出しているバブル直前の時代で、モノづくりやハイテクへの憧れがあり、大学は機械工学科に入学しました。さまざまな授業を受ける中で石油コンビナートや発電所などの産業用プラントに関心を持つようになり、その基盤技術である流体制御を卒業研究のテーマに選びました。大学院に進んでさらに深く学び、修了後は一般企業に就職し、大規模なプラントの自動制御の仕事に携わっていました。例えば、原油からプラスチックをつくる過程では、配管に原油を流して途中で温める、薬剤を加えるなどの流体力学に関わる工程があります。ほかにも発電所ではボイラーで蒸気をつくってタービンを回すなど、機械系エンジニアを必要とする仕事は世の中にとても多いのです。
自動制御のシステムを設計する際にはあらゆる事態を想定しますが、プラントを試運転する現場に行くと、設計者などのエンジニアに求められるのは計画通りに進まない作業や予期せぬ不具合への対応です。砂漠の中のプラントなどでは、その場でデータをとり、制御の調整をして、自分で判断しなければいけない場面があります。電気の配線からバルブの調整まで、持っている引き出しをフルに活用して対処しなければならない時、今まで無駄だと思っていたさまざまな経験が役に立つこともあるので、興味のあることには何でも挑戦してみるとよいと思います。なお、プラントの現場は広大で、そこに建設されているのは複雑な構造物であり、何かの作業をする際には計測機器や工具を持ち運んで地上を移動し階段を昇り降りするだけでも時間と手間を要します。点検作業が日常的に行われていることから、自動化を目指して「GPSなどのセンシングとAIを活用したスマートな自律移動機構」のテーマに取り組んでいます。
自分の生活がどう支えられているかは普段あまり気づかないものです。電気や水道水はどうやって家まで届いているか知っていますか?その途中には、必ず“機械工学”が働いています。なるべくリアルな世界に関心を持ち、自分なりにいろいろ調べたり、周りの友人や大人に話をしたり聞いたりしてみるとよいと思います。
社会人になって、会社で難しい仕事があった時に「習っていないからできません」「上司が教えてくれないからできません」ではなく、自分で何かとっかかりを見つけられるように試行錯誤してみるのは大切なことです。自己研鑽に励み、凝縮した経験を積んでおく。そういう意味で私は大学院進学も目指してほしいと考えています。

専門・研究分野

機械力学、設計工学

研究テーマ

GPSなどのセンシングとAIを活用したスマートな自律移動機構の開発

研究キーワード

移動ロボット、センシング、ナビゲーション、音響振動解析、設備診断

3 すべての人に健康と福祉を9 産業と技術革新の基盤をつくろう11 住み続けられるまちづくりを