グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



総合デザイン学科 尾﨑 文夫 教授


ホーム >  湘南工科大学を知る > SIT LAB >  総合デザイン学科 尾﨑 文夫 教授

総合デザイン学科 尾﨑 文夫 教授

ロボットと暮らすことで、高齢者の生活に安心を

総合デザイン学科の尾﨑文夫教授は、高齢者の安全を見守る自律型ロボットを研究。
最先端のディープラーニングによる画像認識技術や自律移動技術を組み合わせることで
ロボットの可能性をさらに拓き、誰もが安心して暮らせる世の中を目指します。


 高齢者の行動を見守るロボットを開発して、介護する人の負担を軽減したい

超高齢化社会である日本では、介護は重要な社会課題の一つです。特に認知症の患者さんがいる場合は目を離すことができず、介護する側の負担はかなり大きいものになります。そうした現状に貢献したいという思いから、この研究室では高齢者生活支援ロボットを研究しています。

その一つとして取り組んでいるのが、人間を見つけると一定の距離を保ちながらその人物についていくロボット「SITTER(付き添い人という英語と湘南工科大学のSITから)」です。画像認識技術により人物の動きを検知するだけでなく、周辺の状況も認識するので、障害物などを避けて動くことができます。

想定しているのは、認知症の患者さんの見守り役。対象となる人がお風呂やトイレに行くのについていき、なかなか出てこられなければ声を掛けて、応答がなければ家族やスタッフに知らせます。ロボットが見守り役を担うことで、家族やスタッフの負担を少しでも軽減できればと思っています。

また、見守りの一環として、歩き方で人を認識する歩容認証技術を研究しています。この技術の応用として、高齢者介護施設で夜間にトイレに行ったりする高齢者を見守ることを想定しています。夜間は介護スタッフの人数が少なくなることに加えて、暗くて顔認証が難しくなります。また、近年ではプライバシーの観点から、顔認証を使いにくいという問題もあります。そこで、赤外線で体全体の軸と足の動き(歩き方)から個人を特定する歩容認証による見守りを行おうとしています。実験による認識率は90%を超えています。

 三次元空間認識技術、RGB-Dセンサーなどを搭載して、人間や障害物を認識

家や介護施設の部屋など、人々が生活している空間は思ったよりも狭く、さまざまなもので溢れています。そのような環境の中でも正確に、かつ安全に動かなければ実用に至りません。そこで、実環境で動くことを目指して、ロボットと人間が共存するためのさまざまな要素技術を開発中です。

核となる自律移動技術では、三次元での空間認識により障害物を検知して、自ら通るべきルートを算出します。人を認識する機能にはRGB-Dセンサー(ゲーム機で使われているKinectなどの二次元画像と深度情報を得られるセンサー)を使います。センサーにより人を検出し、ロボットがその方向を向いてその人の位置を認識します。

生活支援ロボットでは画像認識技術がカギとなるのですが、太陽光に弱いという欠点があります。SITTERにはRGB-Dセンサーを搭載していますが、可視光で画像を捉えるRGBセンサーでも深度をとらえる赤外線カメラ(Dセンサー)でも、強い太陽光が当たっている場所では正確に画像を捉えることができません。しかし、人が暮らすリビングには大きい窓があることが多く、そのような場所では対象となる人物を見失ってしまう可能性があります。そのため太陽光下でも使えるほかのセンサーと併用して人物の検出を行う必要があります。人と共存するロボットを開発するには、そういったリスクを想定して技術を考えていく必要があります。

 メカトロニクスやデザインの本質から学ぶため、ヒトデロボットを開発

研究室では、メカトロニクスを学ぶ実習教材として学生が自分で考えて一から企画・デザイン・設計・製作することができるロボットの開発をしています。その一つとして3Dプリンターで作ったヒトデロボットの開発にも取り組んでいます。メカトロニクス教材というと、レゴなどのキット化されたものを買ってきて、プログラムを組んで動かすというものが主流です。しかし、それで学べるのはメカトロニクスの一部に過ぎません。メカトロニクスを学ぶのであれば、どのようなものを何のために作るかから考え、それをどのような形にするか、どのような機能を持たせるか、求める機能のためにはどのようなモーターを使うか、また材料は何で、サイズをいくつにし、それをどのように配置するべきかといった“デザイン”の考えが不可欠です。

総合デザイン学科は、全員が1年次から3DCADを学んでいるため、イメージしたロボットを絵に描くことはできます。ところが、彼らが描いたものを見るとモーターが宙に浮いているなど、実際に動く機械にはほど遠いのが現状です。そのような学生たちに、必要なステップを一つひとつ踏みながら、メカトロニクス全体について学んでいってもらいます。

デザインというとビジュアルな要素をイメージする人が少なくありませんが、工学的視点におけるデザインとは「工学設計」を指します。まずどのような機能を持たせたいかを企画し、その企画を果たす機構や部材などを設計し、実際に製作し、きちんと動くかどうかを評価する。総合デザイン学科の学生には、ヒトデロボットの開発を通じて、そういった一連の流れを学んでほしいと思っています。

 東芝との共同研究により国際熱核融合実験炉「ITER」のプロジェクトにも参加

2年ほど前からは、これまでに紹介した2つのロボット製作とは少し異なるタイプの研究として、東芝との共同研究で、核融合炉内で作業するロボット開発にも携わっています。フランスに建設中の国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」は、人類初の核融合炉実験炉を実現するための施設で、日本、欧州、米国などの世界各国が参加している超大型国際プロジェクトです。

核融合炉の内壁はブランケットと呼ばれるタイル状のブロックが440枚並べられていて、発電に必要な熱を核融合炉からブランケットが取り出します。このブランケットは実験開始から10年後にはすべて交換しなければいけませんし、10年以内であっても故障などがあれば交換することになります。もちろん、核融合炉内に人が入ることはできないので、ブランケット交換のためのロボットを開発中なのです。

私が作っているのは、そのロボットのシミュレーターです。限られたスペースでロボットが自動的に作業をするにあたって、どれくらい誤差があってもブランケットを扱えるかなど、主にロボットとブランケットの間にかかる力の制御の部分をシミュレーションします。こうした研究は目標とする高齢者生活支援とは無関係にも見えますが、滑らかな動きを生み出す制御技術など、ロボット研究で生かせる部分が少なくありません。

 誰もが自律型ロボットを開発できる時代、学生にも自律的に研究してほしい

私は、この大学で教員になるまで東芝の研究所で研究員として働き、エネルギー関連のロボットやロボットアームの制御技術について研究していました。ロボット研究ではメカニカルなハード面と、制御系のソフト面との両面が必要ですが、私はソフトウエア開発が好きで、大学でもソフトウエアを中心に研究しています。

近年はソースコードを公開する“オープンソース”が普及し、誰もが機械学習やディープラーニングにチャレンジできる時代になりました。また、かつては数百万円もしたセンサーが数万円で手に入るなど、ロボット開発の環境はここ数年で大きく変わりました。今や誰でもAIを使いこなして自律型ロボットを作れる時代なのですから、学生たちにも自律的に研究に携わってほしいと願っています。

湘南工科大学では2018年度から学科を超えて学べる学科横断型学習プログラムを始めています。このプログラムには「AI」、「XRメディア」、「IoT」、「ロボティクス」の4つのコースがあり、2年生から専門的な研究を進めることが出来ます。私は「ロボティクスコース」を担当しています。コースには総合デザイン学科の学生だけでなく機械工学科や情報工学科などの学生もいて、「ロボットを作りたい」「ロボットを動かしたい」と積極的に研究に取り組んでいます。

目指すのは、開発中の見守りロボットを実際の介護現場で使えるようにすること。そして、そう遠くない未来では、自分たちで作ったロボットに、自分自身を見守ってもらえればいいなと思っているのです。